世界中で、あらゆる世代が不正や不平等、そして社会システムが機能しないことに憤り、既存の活動家組織を上回るほど影響力を高めています。社会は分断され、派閥化も進んでいます。2026年、企業は脅威インテリジェンスとセキュリティ計画を、より流動的で予測困難な社会情勢に適応させる必要があります。

叶わぬ夢が生む抗議の連鎖 

2026年、企業は市民による抗議運動と標的型暴力の増加・多様化をモニタリングし、対応する必要があります。社会の不満が膨らむにつれて、政府、企業、社会・政治団体、個人に対する抗議運動が活発になってきています。アクティビスト化した社会は、政府を腐敗した特殊利益に支配された存在と見なしています。企業を利己的で不公平であり、説明責任を果たさない存在と見なし不信感を高めています。対立する社会集団を、政治的影響力や経済資源、文化的支配を巡る競争相手と認識し、特定の個人を不満の要因として特定しています。

世界的な抗議運動の高まりは、期待と現実の乖離に対する忍耐力の限界を示しています。良質な働き口が不足し、市民の生活費は高騰しています。多くの若いデモ参加者の日常生活は不安定で、将来の見通しは暗く、彼らの親世代よりも生活水準が低下すると見通しています。


It's the system, stupid:制度そのものが問われる時代 

アクティビスト化した社会は、社会システムそのものの変革を求めています。彼らの広範な批判は、社会システムの機能改善を目指す単一課題型の運動とは一線を画しています。立法上の微調整や内閣改造といった慣習的な圧力弁を退け、権力と資源の新たな再配分を要求します。彼らは、具体的な不満に焦点を当てているものの、同時に認識される根本原因や責任者とされる個人にも矛先を向けます。 変化の遅さに苛立ち、即効性を求めます。可視性を得るためパフォーマンス性・共有性の高い行動を糧に、スローガンやシンボルを掲げ国際的な抗議運動と連帯していることを示します。特に若年層は、暴力的な行動を「正義」かつ「必要」と支持する傾向が強まっています。主流派の活動家が過激派を抑制する一方で、アクティビスト化した社会からは、自ら行動を起こす個人が生まれやすい特徴があります。 


社会不安の加速 

アクティビスト化した社会は、社会不安を加速・激化させます。不満を結晶化するような出来事が起こると、法執行機関の予想を遥かに超える大規模なデモを引き起こす可能性があります。自発的であれ組織的であれ、これらは対象に対して圧倒的な圧力を集中させ、意図的な挑発や暴力の隠れ蓑となります。これまで隠れていた、かつ溜まりにたまった不満や怨念が爆発することもあります。 

動員の速度と規模は、企業に準備の余地をほとんど与えません。従来のリスク評価のフレームワークでは、自発的で爆発的に広がる事態を説明しきれなくなる可能性があります。これにより、リアルタイムでの問題特定や感情追跡など、よりアジャイルな脅威モニタリングの取り組みが企業に求められています。アクティビスト化した社会では、これまでは安定していると見なされてきた地域においても、積極的な危機管理計画が必要となります。互いに刺激し合う中、企業は政治的・経済的・社会的不満が類似した組み合わせで存在する地域を、迅速に特定して対処する必要があります。  


個人の脅威 

アクティビスト化した社会では、個人活動者の過激化やニヒリズム的(虚無的)な暴力過激主義が増加する土壌も広がっています。最近のケースでは、個人的な不満がイデオロギー的な動機と結びつき、それがアルゴリズムによるエコーチェンバー、誤情報の拡散、コミュニティ内での扇動によりさらに増幅されていく傾向が見られます。暴力行為がオンライン上で急速に拡散され、その背後にあるイデオロギーも広まることで、加害者が有名になり、時には英雄視されることさえあります。こうした状況が、他のコミュニティメンバーの過激化をさらに加速させ、さらなる暴力行為の温床となっています。

ほとんどの個人は暴力行為に至りませんが、ごく一部の個人が、言葉による主張から実際の行動へとエスカレートすることがあります。これは法執行機関や企業の危機管理担当者にとって重大な課題です。オンライン上では匿名性があると認識することで、攻撃的なコミュニケーションが増えやすくなります。危機管理チームは、その膨大なノイズの中から本当に危険な兆候を見極めなければなりません。社会全体でアクティビズムが高まることで、企業内部からの脅威も増加する可能性があります。企業とその従業員は、実際の行動や対応の有無にかかわらず直接標的とされることがあります。さらに職場が偶発的な暴力の舞台となることもあり得ます。

 

  • アクティビスト化した社会により、政治的安定性が脅かされる可能性があります。2026年、アクティビスト化した社会による抗議運動により、政府が崩壊するケースもあるかもしれません。企業は、抗議運動からの圧力が、政府のレジリエンスを超える可能性のある場所・時期を理解することが重要です。これには、抗議運動を動機付ける不満について深く理解し、譲歩から弾圧まで国家がとり得る対応策についても理解することが重要です。注視すべきホットスポットとして、サハラ以南アフリカ、中東、南アジア、ラテンアメリカにおける若年層の失業率の高さ、経済的不平等、活発なオンライン文化が挙げられます。しかし企業は、北米や欧州の先進国における公共安全、移民問題、インフレにも注意を払うべきです。企業は、潜在的な火種となり得る主要なイベント、政策改革、支出の優先順位、汚職スキャンダルなどを監視することも必要です。
  • アクティビスト化した社会は、特定の企業・事業に脅威をもたらします。その影響を正しく理解するには、状況の文脈が非常に重要です。新たに生じる脅威や加速する脅威を見極めるためには、企業やそのリーダーが、自分たちが従業員・顧客・一般社会からどう見られているかを理解しようとする姿勢が求められます。 暴力的な過激主義の加速と、アクティビストする社会という新たな現実に対応するために、危機予防のための脅威インテリジェンスや要人警護の担当者は、従来のやり方を見直し、適応することを迫られています。

    たとえば、分断されたオンライン環境に対応するための情報収集力の強化や、複数分野にまたがるリスクマネジメントなどの専門性が必要とされています。2026年は、こうした脅威インテリジェンスやリスクマネジメントに積極的に投資を行う企業が、直面する現実をうまく乗り越えていくことができるでしょう。

2026年特に注視すべき5つのトップリスク

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