地政学的な変動が続くなか、アフリカ諸国は新たな資金調達と産業化の方法を模索しています。アフリカ域内での貿易や現地資本市場、付加価値の創出に注力し、新たなパートナー先を求めています。援助の時代は終わりを迎えつつあり、投資の時代が加速しています。思いもよらない分野でも、大きなリターンが期待できるのがアフリカです。
過去10年間のリスク・リワードスコアの変遷
コントロール・リスクスは、オックスフォード・エコノミクスと共同で分析した「アフリカにおけるリスク・リワード指標2025」を公開しました。10年目となる本レポートでは、過去10年間のリスクとリワードのスコアの変遷を分析し、主要な傾向と意思決定を導くためのインサイトを提供しています。
<10年間のリスク・リワードスコアの変遷>
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アフリカの投資環境
- 総合的にみると、24カ国全体のリスクスコアは2017年から2025年の間にほとんど変化していません。リワードスコアは2020年に急落したものの、2025年までにほぼ回復し、地域のリスクとリワードの比率はわずかに悪化しました。これは、アフリカ全体のリスク状況が劇的に悪化したわけではないことを示唆しています。
- 顕著な多様化:スコアは多様化しており、一部の国ではリスクが低減し投資環境が改善した一方で、リスク・リワードの両方が悪化した国もあります。
- 「アフリカ・リスク・プレミアム」への疑問:世界中が地政学的な変動に見舞われるなか、不公平な「アフリカ・リスク・プレミアム」に対する批判が高まっています。2024年には、アフリカへの海外直接投資(FDI)が12%増加し、先進国では海外直接投資(FDI)額(フロー)が減少したにも関わらず、アフリカの投資環境が「数年ぶりに最悪な状況」と表現されたのは不公平との認識が広がっています。
自立への動き
- 戦略的な再編成:地政学的な変動の激化に対応する形で、アフリカ諸国は自らを再構築しています。もはや世界がアフリカにどう資金を供給するかではなく、アフリカが自らの条件でどれだけ産業化できるかという問題に焦点が当たっています。
- 域内需要への注力:企業は、アフリカ地域内の顧客層を優先し、現地での加工が可能な場合は共同投資を行い、アフリカ地域内の金融機関や政策担当者と早期に連携することが求められています。
- アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の活用:AfCFTAは、外部依存を減らし、大陸のレジリエンスを構築するための戦略的レバーとして捉えられています。エチオピアはアフリカ成長機会法(AGOA)からの除外を受け、AfCFTA実施戦略を承認しています。また、南アフリカはアフリカ市場への供給を強化しています。汎アフリカ決済・決済システム(PAPSS)や、アフリカ・ワクチン製造パートナーシップ(PAVM)も地域統合を推進しています。
- 資源に関する約束:鉱物や炭化水素が豊富な国々は、アフリカ・ファーストの産業推進の出発点となる可能性があります。政府は、ロイヤルティの引き上げ、現地加工の義務化や契約の見直しを進めています。ギニアやジンバブエでは、事業者に国内加工工場建設や現地パートナーシップを義務付けています。
金融の覚醒と新たなパートナー先
欧米諸国からの開発援助が減少し、一部の投資家がフロンティア市場から撤退するなか、アフリカは新たな資金源と信頼できるパートナー先を模索しています。
- 多角的な資金調達:欧米からの援助資金が減少するなか、アフリカ諸国は、他の資本を見つけなければなりません。アフリカの金融機関はすでに積極的に介入しており、アフリカ地域内の資本市場が活性化しています。
- アジアからの投資: UAE、サウジアラビア、インド、トルコ、日本は、よりWin-Winの取り決めを追求し、アフリカへの投資に意欲を示しています。彼らは、現代的な施設と引き換えに長期的な運営権を確保しています。
- アフリカ地域内資金の活用:アフリカの年金基金や金融機関は、4兆米ドルの資産を管理しており、2024年にアフリカが受け取ったFDIの40倍に達します。地域内貯蓄の動員を促す政策として、年金基金が政府債券以外の資産に投資することを許可する動きが見られます。
- ディアスポラからの資金調達:エチオピアやモロッコでは、ディアスポラからの資金調達に注目しています。
- 新たな金融商品:政府は、高コストな米ドル建てユーロ債の代替として、中国と日本で販売されるパンダ債やサムライ債を発行しています。
各国のリスク・リワード動向
スコアが大きく改善した市場:
- アンゴラ:政治的腐敗ネットワークの解体と投資家の信頼回復により、リスクスコアが改善し、リワードスコアも上昇。
- コートジボワール:大統領権力の強化とビジネスに友好的な政策により、西アフリカで最も安定した事業環境の一つ。
- ザンビア:国家主義的傾向の反転とガバナンス改善により、鉱業分野で新たな関心を集めている。
- モロッコ: 近代化の推進により、アフリカで最も多様化した経済の一つに。
低迷する市場:
- ナイジェリア:外貨不足、石油盗難、急激な政策変更により、リワードスコアが停滞。
- 南アフリカ:エネルギーと輸送のボトルネック、政治的不確実性により、スコアが低迷。
- エジプト: 大規模な非生産的投資プロジェクト、パンデミック、ロシア・ウクライナ紛争、紅海危機などの複合的な要因により、経済的に困難な状況。UAEとIMFの支援を受けてるが構造改革が必要。
高リスク・高リワード市場:
- エチオピア: ティグレ紛争と民族的暴力の急増によりリスクスコアが急激に悪化。一方、経済の自由化は継続しており、依然として経済成長が期待できる市場。
- コンゴ民主共和国(DRC): 隣国ルワンダが支援する反政府武装勢力「3月23日運動(M23)」が政治的脆弱性を露呈している一方で、銅とコバルトの生産倍増によりリワードスコアが大幅に上昇。
- ジンバブエ:重要鉱物( クリティカル・ミネラル)の高いポテンシャルを持つ一方で、リスクも高い。ゴールドと外貨準備に裏付けされた新たな法定通貨であるジンバブエ・ゴールド(ZiG)の導入(2024年)により通貨が安定。厳格なローカルコンテンツ規制や、地政学的プレーヤーとの複雑な関係が課題。
課題に直面する改革推進国:
- セネガル:元大統領による野党指導者への論争の的となる標的化により、リスクスコアが悪化。隠された債務が露呈したことによりリワードスコアも落ち込む。
- ケニア:財政的苦境と外部流動性圧力に苦しむ。
- ボツワナ:ダイヤモンドへの依存が弱点となり、リワードスコアが最も大きく低下。
企業への提言
アフリカで企業が成功するためには、綿密な市場分析を行い、主要なステークホルダーを特定したうえで、複数の未来を想定した計画を立てることが重要です。安定したアンカー市場や特定のセクターに集中投資し、定期的なコンプライアンスチェックを実施することで、事業基盤を強化できます。また、高リスク・高リワード市場では、信頼できるパートナー先の選定や運用保護、許認可の理解が不可欠です。さらに、現地のサプライチェーン構築や柔軟な事業運営、リスク管理を組み込むことで、変化する環境にも対応しながら持続的な成長を目指すことが求められます。アフリカへの援助の時代は終わり、投資の時代が加速しています。アフリカ大陸における投資機会は、より複雑でニュアンスを要しますが、適切な戦略とパートナーシップを持つことで、依然として大きなリターンが期待できます。
コントロール・リスクスは、アフリカで事業や投資を行う日本企業を長年支援してきました。アフリカビジネスに関するご相談などございましたら、ぜひ下記フォームよりお問い合わせ下さい。
※フルレポート「Africa Risk-Reward Index 2025」(英語版)はこちら。国ごとのスコア詳細などご参照いただけます。