アフリカにおけるリスク・リワード指標(2022年版)

アフリカにおけるリスク・リワード指標:調査結果からみるアフリカの最新リスクと機会


【本記事のサマリ】

  • コントロール・リスクスは、オックスフォード・エコノミクスと共同で「アフリカにおけるリスク・リワード指標」を公開。主要なアフリカ諸国における投資環境を提示するとともに、アフリカ経済における主な投資トレンドを、長期的な視点で分析し、企業・組織が今後のアフリカビジネス戦略や投資戦略を練る上での重要な示唆を提示。
  • 今後のアフリカにおける変革を方向づけ、ビジネス機会とリスクが潜む特に重要なテーマは下記3つ。物理的な安全管理や治安対策だけでなく、こういった動向も注視することが求められる。
  1. 世界のエネルギー転換期におけるアフリカの役割
  2. 食料安全保障
  3. 政府に対する民衆の不満

パンデミック、気候変動やウクライナ情勢などの影響により、世界経済の不確実性は増しています。アフリカもこういった変動の影響を大きく受けており、今後のアフリカ地域とアフリカ以外の地域との関係における役割の見直しという地政学的な変動が起こっています。この大規模かつ急速な変化は、大きなリスクでもあり、アフリカ諸国および投資家にとって重要な機会です。コントロール・リスクスとオックスフォード・エコノミクスが共同で分析・公開した「アフリカにおけるリスク・リワード指標」レポートでは、アフリカ主要国における投資リスク・リワード(報酬)を指標化して提示しています。

国別のリスク・リワード指標

アフリカの主要市場における投資リスクとリワード(報酬)を政治経済の観点から総合的に分析した結果を見ると、前年(2021年)と比べ良い方向に進化した主な国は、アンゴラ、コートジボワール、セネガル、モザンビーク、コンゴ民主共和国です。特にアンゴラはリワードが大きく向上しリスクも減少傾向です。全体的にリスクの変動が少なかったですが、コートジボワールは大きくリスクが減少しています。

アフリカにおけるリスク・リワード指標:調査結果からみるアフリカの最新リスクと機会

アフリカにおけるリスク・リワード指標:調査結果からみるアフリカの最新リスクと機会

アフリカにおけるリスク・リワード指標:調査結果からみるアフリカの最新リスクと機会

 

 

アフリカ各国のリスク・リワード分析をする中で、今後のアフリカにおける変革を方向づけ、ビジネス機会とリスクが潜む3つの重要テーマが浮き彫りになりました。ここからはこの3つのテーマについて解説していきます。

世界のエネルギー転換期におけるアフリカの役割

アフリカにおけるリスク・機会を考える上で注目すべきテーマの1つは世界のエネルギー転換期においてアフリカに求められる新たな役割です。深刻化する気候変動を背景に脱炭素へのエネルギー転換が求められる中、ウクライナ戦争を発端としたエネルギー危機の影響で、石油価格が高騰し、世界各国の財政を圧迫しています。エネルギー不足を補うために、多国籍企業はアフリカを重要な地域と見なし始め、大規模エネルギープロジェクトに関する協力が進みつつあります。

<主な動き>

  • タンザニアでは、モザンビークとの国境付近で長年停滞していた液化天然ガス(LNG)プロジェクトが、再び投資家の関心を集めている。
  •  モザンビークでは、安全上の懸念により停滞していたカボ・デルガド州でのLNGプロジェクトに対する投資家の関心が再び高まっている。
  • 西アフリカでは、セネガルとモーリタニアの石油・ガス共同プロジェクトが2023年に稼働予定。
  • ニジェール、ナイジェリア、アルジェリアは、主に南ヨーロッパ地域にガスを供給する全長約4000kmのサハラ砂漠横断ガスパイプライン(TSGP)の建設に関する覚書に調印。
  • ナミビア、コートジボワール、ケニア、コンゴ民主共和国など、アフリカの石油埋蔵量は、新たな関心を集めている。

石油・ガスプロジェクトに対する国際社会の関心の高まりにより、アフリカ諸国の民間/国営の石油・ガス会社は国内外から融資を受けるのに有利な立場になりつつあります。また財政難の政府は、アフリカ大陸での石油・ガス復活の可能性を歓迎しています。しかし、アフリカは風力、太陽光、水力発電の可能性を秘め、多くのアフリカ諸国は既に電力の大部分を再生可能エネルギーから調達しており、サステナビリティの観点でも期待が寄せられています。実際に、エネルギー関連の投資家は、特に水素エネルギーに関して、アフリカ地域での機会に注目し始めています。

今後数年間のアフリカのエネルギー生産・輸出は成長見込みで、アフリカ各国政府と投資家の双方に利益をもたらすでしょう。 しかし、下記に挙げるリスクに引き続き注意する必要があります。

  • 国内エネルギー供給プロジェクトは、政治的介入、契約上の汚職、プロジェクトの飽和、安全保障上の脅威などの問題に直面する可能性がある。
  •  多国籍企業が参入する際は、現地企業とのパートナーシップを確立する必要があり、ビジネスパートナーやそのネットワークを十分に理解することが重要。コンプライアンスリスクを避けるために、パートナー企業や、現地のコーポレート・ガバナンス基準および関連規制の詳細を理解する必要がある。
  • 石油・ガスだけでなく、再生可能エネルギー関連のプロジェクトにおいてもESG上の課題に直面することがあるため、政府、地域社会、国際NGOと密接かつ慎重に関わることが重要。
  • アフリカ諸国は、企業が現地で利益を得ながら、地域社会と公平な利益分配ができるかを重視し始めている。 今後、特に再生エネルギーなどの分野で、より厳しい雇用規制などが導入される可能性が高い。

食料安全保障

パンデミックやウクライナ戦争の影響により、世界の食料サプライ チェーンは大混乱に陥りました。この2つの危機はまた、アフリカの食料品(特に穀物類)の輸入依存 という課題を浮き彫りにしました。こういった背景 から「農業」と「貿易インフラ」の2つの産業がアフリカにおける食料不安定問題の鍵を握っており、今後のアフリカ投資における新たな機会とリスクをもたらすでしょう。 今後数年間で、アフリカの農業は更に発展し、国家間の貿易関係の変化が鍵となります。アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)は、関税と非関税障壁を削減/排除し、アフリカ地域ないの摩擦のない貿易や地域統合を促進しています。 地域統合が進めば、多国籍企業や投資家は、アフリカ大陸やその純地域を、重要な投資を行うことができる単一の市場として捉えることができます。

地域内貿易が進む中、サプライチェーンにおいても下記のような機会が生まれています。

  • アフリカ各国政府が進める「食品加工の現地化」は、食料供給不足への対処だけでなく、アフリカ大陸での生産能力拡大を促進。
  •  世界的なサプライチェーンの混乱より国内の保管場所のニーズが高まり、eコマース利用者が増えたことで、倉庫や冷蔵倉庫の需要が増加。不動産投資家や物流事業者にとっては利益につながる。
  •  インフラへの投資増は、アフリカが食料自給国になるだけでなく、世界的な食料輸出国になるための鍵。
  • アグリテック(先端テクノロジーの農業分野での活用)は、生活水準向上、気候変動対応、食品ロス削減などに直接的な影響を与えることができるため、投資家の大きな関心を集めている。ケニアやナイジェリアのアグリテック企業は大規模な資金調達を行っている。

アフリカにおけるリスク・リワード指標:調査結果からみるアフリカの最新リスクと機会

しかし、アフリカの構造的な問題は残っています。投資家は、下記リスクを考慮に入れて意思決定を行う必要があります。

  • インフラ(特に電力供給)の不安定性は、高付加価値プロジェクトや冷蔵施設の開発を妨げる。
  •  土地行政は、アフリカの多くの国で最も腐敗しやすい領域。地域社会を犠牲にした土地所有に対する監視の目が厳しくなっていることも風評リスクの原因に。
  • アフリカの農業は、洪水や干ばつなどの異常気象の影響を受けやすい。
  • 主要な食品加工地域(ナイジェリア北西部/中部、エチオピアなど)では、部族間紛争や盗賊など安全に対する懸念が高まっている。

政府に対する民衆の不満

国連の推計によると、パンデミックの影響によりアフリカではさらに5,500万人が貧困に陥ったとされています。ウクライナ戦争は、食料やエネルギー価格を高騰させ、生活費上昇につながりました。気候変動により、各地で記録的な干ばつや大洪水が発生しています。アフリカ政府は介入を試みてきましたが、南アフリカやボツワナなどの裕福な国を除き、最も脆弱な人々を支援するための社会福祉プログラムに資金を投じる資源を持っていません。アフリカ諸国では、危機への備えや対応を怠っていることに腹を立て、政治的変化を求める人々が増えています。2022年夏には、ギニア、ウガンダ、マラウイ、シエラレオネで大規模な抗議運動が勃発しました。治安部隊は騒動の拡大を防いでいるものの、社会経済情勢が依然として厳しいことから、今後さらなる騒動が起こる可能性があります。

国民からの圧力に対し、政府は抜本的なガバナンス改革を行う必要がありますが、多くの国はまだ躊躇しています。さらに、市民運動がガバナンス改革を本当に推進できるかどうかは疑問が残ります。例えばスーダンで続く長年の抗議運動は、新しい文民政府を後押ししたり、経済見通しを改善していません。ガーナでは、市民社会団体の動員に成功しましたが、経済課題の解決は進みませんでした。国民の怒りが政治体制の抜本的な改革を促すこと難しいものの、治安は不安定なままでしょう。

企業にとって重要なのは、直接・間接的に情勢不安の影響を受けるかを適切に評価することです。特に首都や港湾都市などの主要地域が影響を受けている場合、抗議行動はあらゆるビジネスにダメージを与え、業務やサプライチェーンの遅れにつながる可能性があります。企業が、大衆の抗議の標的となる可能性もあります。レジリエンスを確保するためには、企業は強固なセキュリティ対策や代替供給ルートだけでなく、地域の力学を十分に理解し、直接的・間接的な脅威を軽減することが必要です。歳入を増やし、有権者に生活改善と雇用機会創出に向けた努力を示そうとする政府にとっても、企業は依然として格好の標的です。規制・法律の変更に対応できない企業はコンプライアンス違反とみなされ公表される可能性があるため、企業は注意深く監視する必要があります。

政府関係者だけでなく、すべてのステークホルダーから幅広い支持を得ることが、企業の成功を左右します。 特に政府機関や資源が乏しい地域では、企業は積極的に地元団体などを意思決定に巻き込み、支援を得る必要があります。また、企業の従業員も重要なステークホルダーであることを認識し、自社の従業員と積極的に関わることも重要です。

アフリカにおけるリスク・リワード指標:調査結果からみるアフリカの最新リスクと機会

 アフリカは、豊富な人口を有し、若年層が人口に占める割合も高く、世界経済にとって魅力的な市場です。本レポートで見てきたように多様で複雑なリスクを有するものの、機会を見極め適切につかむことは、従来以上に重要です。コントロール・リスクスでは、アフリカで事業や投資を行う日本企業を長年支援してきました。アフリカビジネスに関するご相談などございましたら、ぜひ下記フォームよりお問い合わせ下さい。

※フルレポート「Africa Risk-Reward Index 2022」(英語版)はこちら

 

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