アフリカにおけるリスク・リワード指標2023:調査結果からみる最新リスクと機会

アフリカにおけるリスク・リワード指標2023:調査結果からみる最新リスクと機会


世界的な関心が分散し、大国間の分断が進むことで、アフリカの経済回復は脅威にさらされています。ウクライナ紛争、物価高騰、安全保障の脆弱化、異常気象などは、アフリカにも大きな圧力をかけ、不確実性を増幅させています。そして、世界におけるアフリカの役割の再定義という変化が起きています。二極化した世界はアフリカに深刻なリスクをもたらしますが、これまで幾度となく回復力を見せてきたように、まさに今、アフリカ諸国と投資家が機会を見出す時でもあります。

【本記事のサマリ】

  • コントロール・リスクスは、オックスフォード・エコノミクスと共同で「アフリカにおけるリスク・リワード指標2023」を公開。アフリカ諸国におけるリスク環境を提示するとともに、アフリカ経済における主な投資トレンドを長期的な視点で分析し、企業・組織が今後の事業戦略や投資戦略を練る上での重要テーマを提示。
  • 今後のアフリカにおける変革を方向づけ、ビジネス機会とリスクが潜む特に重要なテーマは下記3つ。物理的な安全管理や治安対策だけでなく、こういった動向も注視することが求められる。
    ① 二極化の利益と落とし穴
    ② アフリカ主導の安全保障介入
    ③ 将来を見据えた資金調達

 

国別のリスク・リワード指標

世界的な地政学的やマクロ経済の不確実性により、アフリカの経済成長が停滞しているため、2022年に比べてリワード・スコアとリスク・スコアともにわずかな変化しか見られませんでした。その中でも、前年と比べ良い方向に進化した主な国は、ザンビア、ウガンダ、セネガル、モロッコ、カメルーンです。アンゴラはリスク・スコアが大きく改善したものの、リワード・スコアも同等に減少。「アフリカ」と言っても国により状況は大きく異なるため、投資対象国の国別リスク評価を行いつつ、他の国々との関係や国際情勢の文脈の中でリスク・機会を検討することが重要です。

二極化の利益と落とし穴

世界の地政学的大国間の分断が進む中、アフリカ諸国は連携を求める大国からの圧力に抵抗しています。しかし、下記のような動向は、アフリカが集団的立場を活用して世界での存在感を高め、世界的な政策に影響を与える機会にもつながります。

  • テクノロジー分野での米中競争および関連するデカップリングの動き
  • ウクライナ紛争に反発する西側諸国は、ロシアの介入を非難するために他地域からの賛同を必要としている
  • アフリカ地域の重要な鉱物資源をめぐる競争の激化

しかし、アフリカ諸国は、中立性と外部からの資金援助の必要性のバランスをとる必要もあり、フレンドショアリング(同盟国や友好国など近い関係性の国との間で限定したサプライチェーンを築くこと)やニアショアリングが定着すると投資家は見ています。

多くのアフリカ諸国は、複数の資金源からの利益を得ることができるため、非同盟のままでいることを実質的に選択しています。コントロール・リスクスは、外交・軍事・商業・文化の分野で、アフリカ各国の米国・中国・ロシアとの連携度合いを調べるために、さまざまな指標を用いて分析を行いました。下図を参照いただくと、南アフリカ、ナイジェリア、ケニアなど、アフリカの中でも大きな市場を持つ国々は、米国・中国・ロシアとバランスのとれた関係を維持していることがわかります。一方、リベリア、中央アフリカ共和国、マリなど、不安定な歴史を有し、より脆弱で小さな国々は、米国・中国・ロシアとの連携度合いを高めています。なお、例外として注目すべきは、近年急速に米国の関係を深めているモロッコです。

アフリカ主導の安全保障介入
ウクライナでの紛争が続き、多くの先進国が国内の政治的懸念の対応を優先しているため、世界の関心事は分散しています。アフリカ地域での紛争や安全保障上の危機は、アフリカ域外の関係者からあまり注目を集めていません。ルワンダのモザンビークへの介入やコンゴ民主共和国東部への東アフリカ共同体の地域部隊の配備などのように、アフリカ地域での安全保障上の危機に対するアフリカ主導の介入の機会も高まっています。治安の悪化と過激化は、今後数年間、アフリカの政策立案者や企業に課題を提示し続けるでしょう。この地域の複雑なセキュリティ環境は簡単に解決できるものではありませんが、今後、アフリカ主体の安全保障介入がより機能していくでしょう。

企業は、多様化するアフリカのセキュリティ・プロバイダーの状況を注視する必要があります。状況に応じて、既存のシナリオ、セキュリティリスク登録簿、保険規定などを見直す必要もあるかもしれません。また、安全保障体制と関係の変更が、事業オペレーション上または規制上のリスクをもたらすかどうか検討する必要があります。

アフリカで事業や投資を行う企業は、軍事力、アフリカ地域内での競争、政治的利益、ビジネス上の利益などが絡み合う、複雑な事業環境をナビゲートすることが求められます。安全保障上の変動を注視し、中立性を維持し、潜在的なレピュテーションリスク回避に向けた取り組みを強化する必要があります。実際に、紛争地帯で業務を行う事業者は、外国軍や民間のセキュリティ・プロバイダーとの相互作用をナビゲートしなければならない可能性もあります。

将来を見据えた資金調達

アフリカは、長期的には地政学的分断から利益を得るでしょう。アフリカの金融サービス機関は、資金ギャップを解消するために介入し、格差是正に向けた支援を始めています。アフリカ地域内の経済大国は、金融サービス機関主導のもと、近隣諸国にその範囲を拡大しています。さらに、アフリカ大陸自由貿易協定(AfCFTA)の影響もあり、アフリカ諸国がより細分化された世界での相互取引を優先するにつれて、金融領域での地域内の連結性はより注目を集めるでしょう。こういった背景から、今後数年間、アフリカの金融サービス領域は機会をもたらすと見ています。

パンデミックとウクライナの紛争により、近年、国際金融市場は不安定になっています。困難なマクロ経済環境により、ほとんどの国が世界的なインフレに対処するために金融政策を引き締めました。アフリカでは、これらの問題が高い公的債務水準と通貨安によって悪化し、経済リスクを高めています。

国連貿易開発会議(UNCTAD)の2023年世界投資報告書によると、アフリカに対する海外直接投資(FDI)は、2021年の過去最高の800億USドルから2022年には450億USドルに44%減少し、アフリカ経済やアフリカ企業が「資金調達の冬」に直面しているという懸念が高まっています。

2019年に発効し、2021年1月に運用開始したアフリカ大陸自由貿易協定 (AfCFTA)は、アフリカ地域内の銀行/金融サービス機関が今後数年間にアフリカ大陸でリーチを拡大するための取り組みを支援しています。AfCFTAは、商品貿易に加えて、国の規制の枠組みを調和させることによりサービス貿易を促進することを目的としています。

2022年1月に開始された汎アフリカ決済システム (PAPSS)は、国境を越えた即時グロス決済を可能にするインフラを提供しています。計画によると、2024年末までにすべての中央銀行がシステムに署名し、2025年末までにすべての商業銀行がこのインフラに組み込まれる予定です。汎アフリカ決済システム(PAPSS)が、既存の地域金融機関に与える影響はいまだ不透明です。しかし、フィンテック導入のコツを備えた、財政的に相互接続された地域は、大きな投資の可能性をもたらすでしょう。

コントロール・リスクスは、アフリカで事業や投資を行う日本企業を長年支援してきました。アフリカビジネスに関するご相談などございましたら、ぜひ下記フォームよりお問い合わせ下さい。
※フルレポート「Africa Risk-Reward Index 2023」(英語版)はこちら

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