第8回アフリカ開発会議開催:アフリカビジネスにおける機会とリスクとは

第8回アフリカ開発会議開催:アフリカビジネスにおける機会とリスクとは


第8回アフリカ開発会議(TICAD8)が、2022年8月27~28日に、チュニジアで開催されます。1993年以降、日本政府が主導し、国連などと共同で開催されるTICADには、毎回多くの政府首脳、国際機関、NGO、経済界のリーダーが日本とアフリカの双方から出席し、民間企業にとっては、アフリカにおける新たな事業創出の重要な機会になっています。

「最後のフロンティア」と呼ばれるアフリカ大陸の最大の魅力は、その豊かで、若い人口にあります。国連によると、2022年時点でアフリカ全土の人口は14億人を超え、2050年には25億人に迫るとも試算されています。また、現在のアフリカ全土の中位年齢は19歳前後とされ、48歳後半の日本と比較すると、若年層が人口に占める割合の高さが窺えます。 生産年齢人口が経済成長に直結していることを考えると、アフリカが有するポテンシャルの高さは世界経済にとって大きな魅力です。

一方、その裏返しとして、新興市場としては未成熟な面も多く、それに伴うリスクも存在します。そもそも、「アフリカ」という単一の市場は存在せず、国によって大きく状況は異なり、そこにアフリカビジネスの奥深さと難しさがあります。また、アフリカ市場でのプレゼンスを確立しようと、各国が働きかけを強めており、国際情勢の変化からも大きな影響を受けています。本稿では、TICAD8を控え、さらに注目を集めるアフリカ市場の魅力と課題について概説します。


新型コロナウイルス

アフリカにおいても、新型コロナウイルスの感染者数は増加と減少を繰り返し、未だ収束は見通せない状況です。出入国や国内での規制を緩める国もありますが、新たな変異株の発生などが引き続き懸念材料となっています。また、医療インフラの不足や国民のワクチンへの抵抗感などから、先進国と比べてワクチン接種が進んでおらず、国により接種状況に大きなばらつきが見られます。新型コロナウイルスの影響でアフリカ各国の経済、財政状況は悪化していますが、今後の経済活動再開にあたって、ワクチン接種割合の違いなどが、アフリカ各国の間の格差をさらに広げる可能性があります。そのため、現地に進出する企業や新たに進出を検討する企業には、投資ポートフォリオを再確認する必要性が高まっています。

 

ウクライナ情勢 

ロシアによるウクライナ侵攻は、アフリカにも大きな影を落としています。特に、ウクライナ産の穀物輸出の停滞やそれに伴う食料価格の高騰は、食料を輸入に頼る多くのアフリカ諸国にとって、食料危機に直結する深刻な問題となっています。農業はアフリカ最大の労働力を抱える産業ですが、植民地時代の名残から、生産が紅茶やカカオ豆など特定の農産物に偏っており、国民の生活を支える穀物生産は脆弱です。そのため、海外からの穀物輸送の遮断は、社会不安にもつながる大きな問題となっています。また、石油や天然ガスなどのエネルギーについては、欧州がロシアの代替地としてアフリカに注目しており、ナイジェリアやアルジェリアなどのエネルギー生産国に大規模な投資が行われる可能性があります。その一方で、エネルギーを輸入に頼る多くの国にとっては、エネルギー価格の高騰が、食料価格と同様に、社会全体の大きなリスクとなっています。そのため、ストライキなどの労働争議や、治安状況の悪化に備え、現地進出企業にはBCP(事業継続計画)の見直しや、従業員の安全確保に向けた取り組みが求められます。

 

債務問題

2022年5月にデフォルト(債務不履行)に陥ったスリランカ同様、アフリカ諸国にとっても債務問題は大きなリスクとなっています。新型コロナ禍による財政状況の悪化やウクライナ危機によるエネルギー価格の高騰に加え、アメリカの大幅利上げに伴う景気後退や通貨安、資金流出により、ドル建て債務の返済が困難になるリスクが高まっています。また、中国による所謂「債務の罠」にも懸念が集まっています。各種報道によると、2020年に、新型コロナウイルス以降、アフリカで初のデフォルト状態となったザンビアの対外債務に占める対中債務の割合は3割前後と見られていますが、コンゴ共和国やアンゴラ、赤道ギニア、ジブチなどの国々も多くの対中債務を抱えるとされます 。今後、融資条件が不透明とされる中国からの融資を含め、どのように債務返済が進められるかが注目されます。もし各国が対応を誤ると、外資系企業の資金回収にも影響が生じる恐れがあり、アフリカに投資や債権残高を有する民間企業には、投資回収のスケジュールや与信限度の見直し、滞留債権の管理強化などの対応が求められます。

 
米中対立 

高まる米中対立の影響はアフリカにも及んでいます。中国はアフリカにとって最大の貿易相手国であるとともに、「一帯一路」構想の一環として、インフラ投資を積極的に行うなど、経済的な結びつきを強めています。一方で、中国は、ガバナンスが弱い国にも積極的に進出するなど、その投資姿勢には政治や安全保障面での影響力を強める狙いがあるとの懸念は根強く存在します。2017年、「アフリカの角」に位置し、インド洋と紅海を結ぶ地政学上の要衝 マンデブ海峡を抱えるジブチにおいて、中国からの投資による「ジブチ国際自由貿易区」に隣接するエリアに、中国初の海外軍事拠点が建設されたことはその一例です。中国は、赤道ギニア、ケニア、タンザニア、アンゴラ、セーシェルでも軍事拠点の確保を目指しているとされ、今後、中国のアフリカでの活動が、米国をはじめとする西側諸国との対立の火種となることが懸念されます。

このような中国の動きに対し、米国を中心とした西側諸国も対抗を進めています。G7は、2022年6月にドイツのエルマウで開いた首脳会合で、発展途上国へのインフラ整備支援に向けた「グローバルインフラ投資パートナーシップ(PGII)」を発表しました。これには中国の「一帯一路」に対抗する狙いがあると見られており、西側諸国からアフリカを含む新興国への投資が拡大する可能性があります。また、米バイデン政権は、二回目となる米アフリカ・リーダーシップ首脳会議を2022年に開催すると発表しており、米国のアフリカへの経済的関与が強まる可能性があります。ただし、人権重視を掲げるバイデン政権の姿勢が、アフリカ諸国への投資にあたってハードルになることも考えられ、実際に西側からアフリカへの投資がどこまで拡大するかは不透明です。米中対立は長期化が予想され、事態がエスカレートした場合には、アフリカを含むグローバルマーケットのデカップリングに発展することも考えられることから、アフリカに進出する民間企業には、アフリカにおけるリスクだけでなく、米中対立の悪化なども視野に入れた事業検討の必要性が高まっています。


ESG

このように、さまざまなリスクを抱えるアフリカビジネスですが、高まるESG投資の有望な投資先となっています。すでに南アフリカなどでは風力発電容量が大きく増加していますが、電化率がまだ低いアフリカにおいて、風力、太陽光、地熱、水力などの再生可能エネルギーに対する期待や開発の余地は大きく、日本を含む各国からの積極的な投資が見られます。2022年11月にエジプトで開催予定の国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)も、こうした動きを促す可能性があります。また、債務問題が懸念される一方で、SDGs債の発行など、先進的な手法で資金調達を実施する取り組みも始まっています。さらに、コロナ禍でアフリカへの投資が低迷する中でも、ITやフィンテック、バイオテクノロジー、医療技術系新興企業への投資は増加しており、特にバイオテクノロジー産業の発展は、ヘルスケアだけでなく、農業分野などへの応用も期待されます。アフリカビジネスでは、優れた現地パートナーとの提携・協業が特に重要であり、アフリカで事業を展開する企業には、国・マーケットの理解とともに、現地パートナー企業の調査、選定が必須のプロセスとなっています。

 

 

このように、アフリカビジネスは大きな可能性を秘める一方で、多くのリスクも抱えています。特に、米中対立やウクライナ危機など、国際情勢が複雑化する中、アフリカビジネスのリスクを考える上でも、従来のような国別のカントリーリスク評価だけでは不十分となる状況が生まれています。今後は、他の国々との関係や国際情勢の文脈の中で、アフリカ諸国の機会とリスクを検討することがより重要になっていくことが考えられます。

コントロール・リスクスは、独自の人材ネットワークを駆使した情報収集力、各国政治や地政学的リスクの専門家による高い分析力、ハイリスクな地域・状況における安全向上に向けた対応と助言などを強みとし、アフリカにも、ヨハネスブルクをはじめ複数の拠点を構え、日系企業を含む世界中のお客様に、コンサルティングサービスを提供しています。

不確実性の高い環境下においても、アフリカで新たな機会を創出し挑戦を続ける日本のお客様に安心・安全を提供し、ともに成長し続けることで、アフリカのさらなる発展に貢献していきます。アフリカビジネスに関するご相談などございましたら、ぜひ下記フォームよりお問い合わせ下さい。

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