2022年以降のサプライチェーンリスク

2022年以降のサプライチェーンリスク


グローバル化の進展と、グローバルサプライチェーンの複雑化が進む中、企業は事業継続性を確保するためにサプライチェーン関連のリスクを見直す必要があります。安全や品質上のリスクや脆弱性をもたらすグローバルサプライチェーンの影響は、今後も引き続き懸念事項であり、企業は真剣に対処しなければなりません。新型コロナウイルスのパンデミックは、予測不可能で前例のない状況を生み出し、サプライチェーンの相互依存関係の脆さを浮き彫りにしました。

企業が生き残るためには、変化を受け入れ、積極的にサプライチェーンの見直しを行うことが重要です。サプライチェーンに関するリスク状況を常に監視するとともに、強力なサプライヤー管理プログラムを実行することによって、企業のサプライチェーンのレジリエンス(強靭性)が確保されます。地政学的な問題やパンデミックの影響、その他の外部要因により、最も費用対効果の高い原材料の調達ができるとは限りません。

2022年以降、企業が備えるべきサプライチェーンリスクには、どのようなものがあるのでしょうか。Everstream Analytics社が発表した「2022年サプライチェーンリスク年次報告書」では、企業が包括的なリスク評価と、柔軟な対応計画の策定に集中すべき主要な脅威として、下記5つが挙げられています。

  1. 水資源の世界的な不足

水は、あらゆる製造業にとって重要な要素です。人口増加、都市や産業の急速拡大、干ばつや洪水などの異常気象の増加により、水資源の需給逼迫の脅威が、加速度的に高まっています。ヨーロッパのライン川などでは、記録的な水位低下を経験し、原材料や完成品の国内外への輸送に影響を及ぼしています。また、水の供給不足は価格の高騰を招き、さまざまな産業を脅かす可能性があります。

  1. 海上貨物のボトルネック

パンデミック期間中に見られたように、世界の海上貨物業界は港の混雑と遅延に悩まされ続けています。在庫不足、消費者からの需要増、パンデミックによる資源や物流問題などの要因が、サプライチェーンに混乱をもたらし続けています。ターミナルや港全体の一時的な閉鎖は、船舶の長い待ち時間を引き起こしています。また、船舶が入港できたとしても、多くの企業が荷揚げに問題を抱えており、賞味期限の短い商品の品質への懸念が生じています。2021年3月、スエズ運河の6日間の封鎖により海上交通が停止し、システム全体のサプライチェーンに影響を与えました。この出来事は、世界のサプライチェーン・インフラがいかに脆弱であるかを示すものでした。

  1. 労働者の離職 

世界中で、サプライチェーン関連の仕事から、多くの労働者が離職しています。ストライキを起こした労働者は替わってもらうという雇用主の脅しは、もはや通用しません。倉庫キャパシティの限界、労働者やトラック運転手の不足、港湾での遅延、パンデミックの影響などにより、船会社や運送会社はストライキによる混乱に相当なリスクを抱えています。

  1. 「ジャストインタイム」から「ジャストインケース」へ 

長年にわたり、「ジャストインタイム」戦略は費用対効果が高く、効率的な生産・在庫管理方法であることが証明されていました。しかし、パンデミックの影響で、企業は「ジャストインケース」に考え方を変え、重要な部品や材料の安全在庫を増やし、需要の高い品目の在庫を維持するようになりました。「ジャストインケース」戦略では、在庫レベルが上昇し、必要な倉庫スペース、労働力、保険料が増加するほか、陳腐化した在庫が増加する可能性があり、コスト増につながります。ロックダウンや国境閉鎖が続くと、「ジャストインタイム」の在庫管理への回帰が遅れます。

  1. 関連する規制の精査 

企業の社会的責任とサステナビリティ対応は、大きなビジネスリスクに発展する可能性があります。ESG(環境、社会、ガバナンス)の取り組みは、レピュテーション・リスクを回避するための重要な推進力です。一部の国では、人権に関するサプライチェーン法が制定されていますが、今後、各国で企業やサプライヤーの人権侵害に対する責任を追及する法律が制定されると予想されます。これらの法律の制定により、法律の規定に違反した企業には、罰金、貨物の差し押さえ、あるいは数年間の公共調達からの排除など、大きな罰則が課されることになります。日本においても、経済産業省が人権デューデリジェンスについての指針をまとめ、企業に対応を促す動きがでてきています。

 

企業が安定した事業運営を維持するためには、グローバルサプライチェーンに関連する脅威に早急に対処する必要があります。コントロール・リスクスは、世界中のお客様の問題解決を支援しており、脅威に対応し、リスクを軽減するために企業が講じるための措置があると考えています。以下に紹介するのは、企業が検討すべき主要な対策の一部です。

  • 俊敏性
    企業は、安定した資材の供給を確保するために、可能な限り、サプライヤーを自国に近いところに移管する俊敏性を備えておく必要があります。これは、可用性、コスト、リスク、潜在的な成長性のバランスをとる上で、大変な対応となるかもしれません。リスクモデルやテクノロジーを活用することで、企業の目標を達成するために、十分な情報に基づいた意思決定を行うことができます。
  • 柔軟性
    不安定なサプライチェーン環境に適応するために企業がとるべき行動には、調達・流通戦略における柔軟性の確保が含まれます。柔軟性の基礎となるのはビジネスパートナーとの関係性と、彼ら自身の力量です。サプライヤーをより理解し、信頼を築き、契約上の合意に対するパフォーマンスを検証し、サプライヤー自身が適切なビジネス関係を管理していることを確認するために、サプライヤー監査を実施することが重要です。サプライヤー監査は、製品の安全性に問題を引き起こす可能性のある業務上の問題点を発見することができます。上述のサプライチェーンの問題を考えると、この点は非常に重要です。特に、資源の枯渇に伴い、品質や安全性の基準が緩んでいるケースが見られます。問題点が見つかれば、是正措置や代替の材料調達方法が必要となる場合もあります。
  • モダナイゼーション(近代化) 
    企業が採用するもう一つの戦略は、業務のモダナイゼーション(近代化)です。サプライチェーンを完全に可視化できるリアルタイムデータを手元に置くことで、サプライチェーンの混乱に対応できるようになります。また、サプライチェーン全体に波及し、ビジネスの混乱を拡大させる可能性のある操業度の低下や操業停止を、可能な限り回避するための予防策を講じることができます。生産性とリソース量のバランスを最適化することは、納期遵守と生産能力制約の管理に役立ち、製品品質リスクの軽減にもつながります。オンタイムでのデリバリーを維持・改善するためには、生産、在庫の戦略と実践を「ジャストインタイム」から「ジャストインケース」へ一時的にでも移行する必要があるかもしれません。材料に対する需要が一定期間満たされない場合、製品の代替や再設計を行うことも戦略として考えられます。一方で、食品など保存期間が短い製品は、在庫が増えると腐敗や細菌繁殖のリスクがあります。原材料の代替に頼らざるを得ない場合、製品の品質、安全性、規制の遵守を確保するためのリスクアセスメントが必要となります。
  • 予知・予防保全
    意外と見落とされがちなのが、予知と予防保全の重要性です。生産設備の重要な機械部品のリードタイムは長く、予防保全プログラムを徹底することで、重要な設備の不要なダウンタイムを回避することができます。また、生産設備がメンテナンスの期限を超えて稼働し続けると、粗悪品が出たり、異物混入のリスクが高まったりする可能性があります。
  • 規制対応の強化
    企業は、政令の改訂や新たな規制によって、今後も課題に直面することになるでしょう。サプライチェーンにおける人権に関する新たな規制を遵守するために、ESGなど、企業の社会的責任やサステナビリティに関する監査の実施がますます重要になります。倫理に反する行動をとった企業は、それが故意か無意識かにかかわらず、政府による制裁、規格外または安全でない製品の回収、ブランドや企業の評判の悪化などのリスクを抱えることになります。また、企業は、コンプライアンス違反やリコール、罰金、政府による制裁のリスクを回避するために、日々変化する製品安全に関する規制に常に対応する必要があります。
  • トレーサビリティの向上 
    グローバルサプライチェーンにおいて、より安全でトレーサビリティの高い製品を実現するために、企業は、先進的な技術を活用し、サプライチェーンを通じて製品を追跡するより良い方法を模索しています。特に食品業界では、アメリカ食品医薬品局(FDA)の「New Era of Smarter Food Safety」イニシアチブに関連して、トレーサビリティが食品の安全性を維持するための重要な要素です。隅々まで網羅するトレーサビリティを実現するには、サプライチェーンに関わるすべての関係者の関与が必要です。なぜなら、製品の安全性に問題が見つかった場合、影響を受けたすべての製品をシステム全体で迅速に追跡することが不可欠だからです。サプライチェーン全体でデータを交換し、相互にリンクさせることで、製品の可視性を高め、トレーサビリティの課題を解決するための洞察を得るとともに、有害な製品から消費者を保護する手段を提供することができるのです。
     

ここ数年に経験したサプライチェーンの混乱、今後予想される脅威、そしてサプライチェーンにおける避けられない変動やリスクを考慮すると、企業はサプライチェーンとそのデータの可視性を確保することが不可欠となります。あらゆる状況に備えるために、サプライチェーン管理プログラムの見直しに加え、サプライチェーンリスクを再評価し、これらのリスクを回避、軽減、対応するための効果的な戦略を持つ必要があります。入念な準備、俊敏性と柔軟性の確保が、企業のサプライチェーンの回復力を高める鍵となるでしょう。

【セミナー情報】
2022年10月12日(水)開催のサプライチェーンリスクに関する下記セミナーにて、コントロール・リスクス・グループ株式会社 プリンシパル 竹田 博彦がゲストスピーカーとして登壇します。昨今の地政学的環境や欧米企業の事例紹介を交えて、サプライチェーンリスクに対し日本企業がどのような対応をとるべきか解説します。

■開催概要■
開催日時:2022年10月12日(水)
開催形式:オンラインセミナー
テーマ:サプライチェーンリスクに対する日本企業の採るべきアプローチ
詳細・参加登録:こちら

コントロール・リスクス・グループでは、サプライチェーンやESG関連のリスク対応に関する支援を世界中の企業・組織に提供しております。ご相談などございましたら、ぜひ下記よりお問い合わせください。

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