インテリジェンス機能を構築・強化する3つの処方箋

インテリジェンス機能を構築・強化する3つの処方箋


Author: 尾嶋博之

昨今の不確実性の高まりを受けて、地政学的リスクなど外部の事業環境変化をタイムリーに捉えるべく、インテリジェンス機能の構築・強化を進める企業が日本でも増えています。本記事では、インテリジェンス機能の構築・強化に向けた課題と対応策を、具体的な取り組み事例も踏まえて解説します。

【本記事のサマリ】

  • インテリジェンス機能構築の重要性を認識して取り組みを始めても、情報収集・活用や推進体制などについて課題を抱える企業が多い。
  • こういった課題に対する3つの処方箋を提案する。

①体系的なフレームワークで網羅性を確保しつつ、重要な脅威に絞り込む

②自社にとって意味のある情報に落とし込む(自分ごと化)

③社内外のリソースと大きなチームを作る

企業におけるインテリジェンス機能

インテリジェンスは情報(インフォメーション)に何らかの意味づけをしたものとして説明されることが多いですが、下図は組織におけるインテリジェンス機能の概念を示したものです。

インテリジェンス機能をより深く理解するためのポイントを解説します。

  • まず「01.方針定義」が起点になります。インテリジェンスの利用者、つまり意思決定者がニーズに合わせて自社にとってどのような情報が重要なのか明確にして、情報収集分析の方針を決めるという非常に重要なステップです。ここから「02.収集」→「03.抽出」と進みます。
  • 「04.意味付け」で、情報がインテリジェンスに仕立て上げられます。意思決定に資する優れたインテリジェンスを仕立てるために、この「04.意味付け」が重要です。そして数多ある情報の中からいかに自社にとって重要な情報を収集・抽出していくか、その前提となる「自社にとって重要な情報」とは何か、といった方向性・方針付けが要となるため、逆算的に見ても「01.方針定義」が重要であることがわかります。
  • 情報は、日々刻々と変化していきます。情報が変化すれば、それに基づく意思決定もニーズも変化します。そのため、結果的にこの図のようなサイクルを描いていくことになります。また、インテリジェンス活動を続けながら、その仕組みやプロセスそのものをレベルアップしていくためにも、このサイクルをしっかり回していくことに意味があると考えます。

インテリジェンス機能構築・強化における課題

インテリジェンス機能の構築・強化に取り組む企業が増えている一方で、多くの企業は下記のような課題を抱えています。

  • 昨今、あふれる沢山の情報の中で、自社にとって重要な情報を漏れなく収集するのが難しい
  • 頑張って情報を収集・整理して資料にまとめても、経営者に活用されているかわからない
  • そもそも情報収集・分析のためのリソースや専門性が十分でなく、体制として十分に進められない

こういった課題に対し3つの処方箋が有効です。

①体系的なフレームワークで網羅性を確保しつつ、重要な脅威に絞り込む

②自社にとって意味のある情報に落とし込む(自分ごと化)

③社内外のリソースと大きなチームを作る

 

上記3つの処方箋について、実際の取り組み事例を紹介しながら解説します。

①体系的なフレームワークで網羅性を確保しつつ、重要な脅威に絞り込む

まず1つめの処方箋について具体的な取り組み事例を紹介します。

<事例:PESTLEフレームワークで網羅性を確保し、重要な脅威を絞り込む>

外部環境分析をする際に使用される体系的なPESTLEフレームワーク(P:政治、E:経済、S:社会、T:技術、L:法規制、E:環境)を活用した事例です。このフレームワークは外部環境をマクロ視点で網羅的に捉えているのに適しており、昨今活用する企業が非常に増えています。他にも色々なフレームワークがありますが、こういったフレームワークを活用し体系的に情報を捉えていくことが重要です。ただ、これらの情報すべてを収集していくのは現実的ではないため、重点領域を絞り込むこともポイントです。自社の経営や事業環境に対して何が重要な影響を及ぼす可能性があるのか、そういった観点で収集・分析をする対象の領域を絞り込んでいく必要があります。

②自社にとって意味のある情報に落とし込む(自分ごと化)

この処方箋の具体的な取り組み事例を2つ紹介します。

<事例1:シナリオを用いたインタビューで経営者の声を引き出す>

インテリジェンス機能の説明の中で「起点となる方針定義が重要」と先述しました。インテリジェンスのニーズを明確化するために、意思決定者である経営者に、どのようなことを考えているのか、経営者の関心事項を直接インタビューします。

PESTLEフレームワークなどを用いて、外部環境の状況を簡潔に整理した資料を参考にしながらインタビューを進めると、より具体的に中長期の将来像をイメージでき、地に足のついたインタビューができます。また、経営者に直接話を聞くというプロセスそのものが、経営者自身が自分ごととして考える良い機会になります。

<事例2:リスクシナリオに基づいたストレステスト>

次に紹介するのは、絞り込んだ特定の外部環境情報をより具体的にシナリオに落としこみ、深い分析を行って自社の組織・事業への影響を評価する取り組みです。まず、対象の外部環境情報に基づいて時間軸を考慮しながらシナリオという形で具体的な状況を描写していきます。必要に応じて複数パターンを作ったり、地図なども用いながら、リアリティを意識して表現します。そのシナリオの内容を前提に、自社の事業、経営資源、オペレーション、サプライチェーン、主要ステークホルダーなどに対してどのような影響が及ぶのか評価します。その評価を基に、影響の検証・テストを行いさらに具体化していきます。自社への影響を具体的に評価することが、まさに自社にとって意味ある情報に落とし込むことになります。

③社内外のリソースと大きなチームを作る

最後に3つめの処方箋について、具体的な取り組み事例を1つご紹介します。

<事例:情報収集・分析を社内外を横断する大きなチームで分業>

社内に情報収集分析の体制を構築する際に、例えばリスク管理部門などに情報収集・分析の担当を割り当てる会社が多いと思います。ただ、担当部署を割り当てても、実務担当者は1名程度というケースが多く、その担当者だけで情報収集・分析をやっていこうとしても業務がパンクしてしまいます。または、部分的あるいは偏った情報収集になってしまいます。一方で、例えばAI・テクノロジー関連は情報システム部門、各国の法規制動向については法務部門など、社内にはすでに普段の業務内で各種外部情報を収集している部門があります。そういった部門を、特定領域における情報収集・分析の社内専門部門と位置づけて、リスク管理部門が司令塔となることで、全社的なリスク分析や対応検討時の連携もスムーズに行うことができます。加えて、十分にカバーしきれない領域については外部の専門会社なども活用しながら収集すべき情報を網羅します。リスク管理部門が司令塔となり、社内外の関係者とつながり全体で大きなインテリジェンスチームを組成し、情報収集・分析をリードすることで、組織として情報収集・分析能力の強化を期待できます。社内部門との連携の重要性は認識していても、上手く連携できないといった課題を抱えている企業も多いでしょう。こういった課題に対し、例えばオンラインツールを活用してバーチャルなコミュニティを作り、部門横断のコミュニケーションを活発に行うなど工夫している企業もあります。PESTLEフレームワークなどを活用して満遍なく情報をカバーできる体制を、社内外と連携して築くことが重要です。

本記事では、企業がインテリジェンス機能を構築・強化する上での課題に対する処方箋を解説しました。コントロール・リスクスでは、リスク情報の収集・分析やインテリジェンス機能強化のための体制構築に向けた支援を提供しています。具体的なご相談などございましたら、下記フォームよりお問い合わせください。

※本記事は、2025年2月19日に開催したオンラインセミナー「地政学的リスク情報を活用したインテリジェンス経営」の内容を抜粋・サマリしたものです。録画配信もご視聴いただけます。

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