米国の世界的な影響力は弱まり、投資環境はますます複雑になっています。2025年における米国の政治・経済的環境はさらに不確実性が高まるでしょう。

トランプ新政権は、2025年のグローバルビジネスにおける米国国内の政治リスクと外交政策リスクを高めるでしょう。トランプ大統領は、2期目を通じて世界秩序の再編を試み、米国は経済的・地政学的な敵対国に対して、より直接的かつ攻撃的に対峙することになるでしょう。 

新政権は、下記に挙げる2つの長期的なトレンドに影響を与えるでしょう。 

1.米国の相対的な影響力の低下:ほとんどの国家は、借款や援助、製品や技術貿易の相手国として、米国以外の選択肢を有しています。台頭する大国は、いわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々を新たな枠組みに取り込もうとしています。先端技術の活用により、各地域そしてグローバル規模でも競争相手が力をつけつつあり、米国の軍事的優位性が弱まってきています。米国のソフトパワーは、民主主義の機能不全と外交政策によって弱まりました。与野党ともに、持続不可能な財政赤字を抑制するつもりはなく、地政学的な影響力を弱体化させています。明確な覇権国が不在の世界は、より流動的で可変性のある不安定な世界になるでしょう。 

トランプ氏は、米軍の海外駐留を撤退させ、重要な国際機関や国際条約から撤退もしくはこれらを無力化し、パートナーシップや同盟に新たな条件を付与するでしょう。これにより、米国の相対的な影響力の衰退は加速するでしょう。孤立主義的あるいは非介入主義的な態度が「アメリカ・ファースト」の官僚機構に浸透します。アジア、ヨーロッパ、中東地域の、米国と同盟を結ぶ各国は、米国の安全保障上の約束が以前ほど信頼できなくなります。通商政策でも孤立主義的な傾向に直面する可能性が高まっているため、米国の同盟国は、米国との経済的関係についても見直しや対策を講じる必要がでてくるでしょう。特に米国の金融政策の独立性については、多くの国が懸念を抱いています。仮にトランプ氏が国防費を増やし、大規模な紛争を抑止することができたとしても、米国はこれまで既存のパートナーシップや同盟国と連携して増強してきた軍事的能力を無駄にするリスクを抱えています。 

2.複雑化する米国の投資環境:
政権交代に伴い、各種規制の見直しが進められる中、政治的な分断が連邦、州、地方レベルの政策間の乖離を促進します。規制の断片化は、エネルギー、交通、住宅といった分野の改善を妨げています。国家安全保障の名目で実施される関税、投資制限、制裁、産業政策は、貿易や国際投資における地政学的リスクやコンプライアンスリスクを高めます。 

トランプ氏は、企業向けの広範な規制緩和のアジェンダを追求し、従順な議会とともに、投資を引き付けるために法人税削減を行うでしょう。多くの多国籍企業にとっての課題は、米国の規制緩和と、自社の社会・環境コンプライアンスに関するコミットメントや義務とのバランスをどうとるかです。また、通商政策(特に対中通商政策)が転換されることで、サプライチェーンの調整や移転が求められるでしょう。トランプ氏は、連邦官僚機構の解体計画ともいえる大規模な再編成を進め、連邦政府の規制の策定と執行能力を制限するでしょう。反対勢力である民主党を支持する「青い州」は、共和党を支持する「赤い州」と連邦の政策に対抗し、無効化するための努力を強化し、米国内の政治的な分断と規制の複雑化はさらに進むでしょう。 

ビジネスへの影響 

大統領選が非常に接戦であるため、多くの企業は2024年にかけてトランプ政権が再び誕生する可能性に備えてきました。 

トランプ新政権は、一期目と似ているようで同じではありません。今回は、大統領権限の全てを利用する準備が整っています。そしてトランプ氏の周囲は、その資格の有無にかかわらず、目的を達成するために規範を曲げたり破ったりすることを厭わない、より党派的で忠誠心の強い幹部で固められています。 

これらの要因は、これまで政府改革運動を阻んできた官僚的な硬直性を打ち破るのに役立つ一方で、急速かつ予測不可能な変化を引き起こす可能性も秘めています。企業は、自社の利益が反映されるよう、積極的に意見を述べるための場を確保する必要があるでしょう。 

2025年特に注視すべき5つのトップリスク

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