インテリジェンスの活用による危機の回避・打開 ~2020年4月19日

新型 コロナウイルスは、世界のありとあらゆる不確実性を急激に高めました。そしてこの状態は、ワクチンが広く入手可能となるまでの間、今後数年間は漸次的に変化しながら継続することが想定されます。また、自然災害を含めた新たなる危機が同時に発生することも十分に想定されます。このような規模での不確実な世界は正に未知であると言えます。
そのような中においても、民間企業の多くは、事業を継続し社会的責務を果たす上でも、新型コロナウイルスに対する各種対応策について検討を進め、一部では、組織的耐久力（レジリエンス）の向上、シナリオ分析に基づく戦略再策定、リスク・危機管理体制の強化、債権管理体制の強化、等について徐々に着手し始めている状況です。
ここで、民間企業がリスク・危機対策を行なう上であらためて理解すべき重要な点は、今回の新型コロナウイルスという見えない脅威がもたらす影響には 「前例のない特性」 があるということ です。コントロール・リスクス日本法人は、この特性を次のとおり三つのカテゴリーに整理しております。この特性を踏まえた対策を講じない限りにおいては、構築された管理システムは実効性を失う可能性が高まります。そして、この三つの特性の全てについて、既存の社内管理体制を使い自社単体で対処することは極めて困難になることを予め想定しておくことが大切と言えます。

1. 遮断された世界

現在世界各地で実施されている都市封鎖や渡航制限に加えて、例えば次のような事態の発生により、一部の国・地域については物理的移動が断続的に数年間は困難になると予想されます。これは即ち、これまで物理的移動によりもたらされてきた 「情報へのアクセス」 が困難になることを意味し、代替措置を早急に検討する必要性が生じることを示唆します。
 感染リスクを警戒することによる海外への移動自粛
o 感染が収束していない国、医療体制が脆弱な国、公式情報の信用性が低く感染実態が不明な国への移動自粛
o 重症化リスクの高い人の移動自粛、等
 治安悪化による移動自粛
o 政情不安、景気低迷等に伴う組織犯罪や日和見的犯罪の横行、テロ組織等の活動活発化、抗議行動の頻発、等
 ヘイト・クライムへの遭遇リスクを回避・軽減するための移動自粛
o 特に僻地や感染爆発による死者数の多い国・地域への渡航においては注意が必要
 特定国による日本からの渡航禁止・拒否、又は渡航者の隔離措置を見越しての移動自粛、等

2. 政治の即時変化

主要な民主主義国家においても異例のスピードで政治的意思決定が断行されており、ましてや他の統治体制の国においては予測もされなかったような速さと規模で社会経済活動における変容が既に確認されつつあります。今後想定される経済の再建に向けて、そして再発する感染爆発に対して、各国が独自の施策を即時的な政治上の意思決定で進めていくことが想定されます。それらの中には、諸外国や外国資本に対する好意的又は敵対的な政策・規制・経済制裁、更には政権保持を意図したポピュリズム的政策も数多く出てくることが考えられます。一部の国・地域においては、既存の政治体制に変化が生じることもあり得ると考えられます。そのため、今後のグローバル・ビジネスの機動的な舵取りを行なう上では、「政治・政策動向に関するインテリジェンス」 を適時かつ確実に確保する体制の整備が重要となります。

3. 複雑な相互作用による予見 困難

グローバル資本主義の発展と世界規模での効率化の追求は、極めて複雑なグローバル・サプライチェーンを生み出しました。また、海外への積極的な投融資活動の結果として、日系企業は世界各地に多様な資産を保有する状態に至っています。そのような中で発生した新型コロナウイルスは、全世界的規模で断続的に社会経済活動に影響を及ぼしており、それは時として他国間との新たな摩擦の温床にもなりつつあります。そのような 「世界規模での相互作用と影響の連鎖」 に加え、前述の 「遮断された世界」 、そして 「政治の即時変化」 の発生を受け、民間企業がこのような不確実なリスク環境の予見を独力で行なうことは極めて困難になると考えられます。

日系企業が今後抱える悩みや課題（一例 ）
コントロール・リスクス日本法人は、「新型コロナウイルスにより生じる新たなリスク環境」 において、ワクチンが十分に行き渡るまでの間に民間企業が海外で直面することが想定される20の主要リスクを洗い出しました。それら主要リスクの中で、例として次のような事態に日系企業が直面する可能性があることを想定しております。これらの事態への機動的な対処において、インテリジェンスをベースとしたリスク・コンサルティングが有用となります。
 

• リスク・シナリオを練ることとなったが、政治的 な変化が激しく即時的であり、特定国の短期～中期のシナリオを自力で練ることができず、また複数ヵ国をモニタリングするキャパシティが組織に無い
  

• 海外の某国における国家レベルのインフラ・プロジェクトが新型コロナウイルスによりどのような影響を受けるか予測ができない（エンジニアリング会社、商社、ゼネコン、金融機関、等）
  

• 自社の主要市場における政府が自国産業の保護のため外国資本に対して厳しい政策を検討している模様であるが実態が不明であり対策が立てられない
  

• 投融資を検討している対象企業（又は投融資後の対象企業）が新型コロナウイルスによりどのような影響を受ける可能性があるのか精査しきれていない（又は情報開示に非協力的）
  

• サプライチェーンが途絶したことにより新たな販売ルートを暫定的に確立したものの、債権管理上のリスク（人権リスク／経済制裁リスク／コンプライアンス・リスク等）評価が後手になっている
  

• 赴任者を帰国させて自社海外工場の管理を現地社員に一時的に任せているものの、適切にガバナンスを効かせているか直に様子を確認することができずに不安が増している
  

• 安全保障貿易管理の観点から新規顧客の実態を確認するプロセスがあるものの、実地調査が叶わず、リスクを精査する術がなく営業活動に支障を来している（又は規則を蔑ろにしている）
  

• 景気低迷による政情不安により、既存政権が解散／崩壊する可能性が出てきたものの、それが現実となった場合における自社ビジネス（投融資先ビジネス）への影響を測りかねている
  

• 市場開拓を検討している国において、景気刺激策としての外資からの投融資が歓迎され、ビジネス機会が生まれつつあるが、新規市場における利害関係者やリスクが精査しきれていない
  

• サプライチェーン上で特定国の現地当局が関与する形で物資の輸送に遅延・停止が発生しているものの、その実態が不明であり、対応策を検討することができない
  

• 新型コロナウイルスによる景気低迷により治安が悪化しているが、当外国における安全上の脅威の変容を自力で予見することが困難である（特に多国籍に事業展開をしている場合）、等
  

インテリジェンス 機能の創造的な活用による問題の打開

未知の世界におけるリスクと危機の回避・軽減においては、迅速かつ正確な 「情報収集と分析能力（インテリジェンス）」 が極めて重要となります。他方で、前述のとおり、今後数年間のグローバル・ビジネス環境においては、既存かつ自前の情報収集と分析能力では速度と精度が担保されない可能性が高いと言え、それが結果として誤った意思決定、意思決定の遅延、危機発生防止の機能不全等につながる恐れが十分に想定されます。更には、情報収集・分析が行えないためにビジネス機会を放棄する（見過ごす）事態すらも想定され、国際競争力の構図にも今後変化が生じてくる可能性もあると言えます。そのため、新型コロナウイルスに対する有効かつ十分なワクチンが行き渡るまでの間、外部機関との連携に基づき行なう必要がある情報収集・分析を早期に定義・整理し、具体的な体制の在り方について検討を開始することが推奨されます。　
コントロール・リスクスは、インテリジェンスをベースとしたリスク・コンサルティングの専門機関として、クライアントが今後抱えることが想定される悩みや課題を打開するために、最適かつ創造的に対応策をカスタマイズする形で事業活動を支援いたします。新型コロナウイルスが存在する未知のリスク環境において、ビジネス・インテリジェンスの提供機能を有する基幹インフラとしての使命を果たしてまいります。詳しくはお気軽にお問い合わせ下さい。

インテリジェンスをベースとしたリスク・コンサルティングを成立させる４つの柱

政治リスク分析の 専門集団
コントロール・リスクスには世界各国・地域の内政動向を分析する専門部門がグローバルに設置されて数百名規模で動向を独自にモニタリングしています

リスク調査のグローバル・ネットワーク
世界各国・地域の企業・人物・組織等の実態を独自に調査する能力を保有しており、非公知のリスク情報についても迅速に収集・分析することが可能です

圧倒的な危機管理の実践経験
世界各地でリスクが顕在化した際の危機管理についても長年の対応実績があり、リスク・マネジメント上の重要ポイントに関する磨き抜かれた知見とノウハウを有しています

テクノロジーを使ったビッグデータの活用
各種データ収集・分析の技術を用いてオンライン・リスク情報ツールを日々拡充し、効率的なリスク・モニタリング体制を整備する支援を行っています