海外でのリストラクチャリングや不正調査におけるリスク管理、危機管理

海外でのリストラクチャリングや不正調査におけるリスク管理、危機管理

1.直面するジレンマ
新型コロナによる行動制限に伴う経済的なインパクトは、世界的な失業者の増加を生み出しています。また、財政が逼迫している国家においては社会保障も脆弱であるため、現地住民による民間企業への期待や要請、例えば就労機会創出や社会貢献等が今後増していくと考えられます。これは言い換えると、企業側の都合によるリストラクチャリングを実施することが今まで以上に難しい環境が生まれることになります。特に、失業率が高い国・地域からの撤退判断や既存契約先からの変更に際しては、地元政府や主要取引先等を含めた利害関係者からの反発が必至であり、極めて慎重な統合的リスク管理、並びに危機管理が必要となります。
そしてリストラクチャリングを進める際に、隠蔽されていた問題が浮き彫りとなったり、コンプライアンスの観点から懸念される外部組織や人物との繋がりや関与が明らかになったりする事例も実際にあります。そのような懸念がくすぶる中、強引にリストラクチャリングや不正行為調査等を進めた場合、安全上のリスクが現実となったり、時として切迫した危機に発展したりすることがあるため、果断を躊躇するというジレンマに直面します。
コントロール・リスクスは、そのようなジレンマの適切な解消に向けたアプローチを実践経験の中で磨いてまいりました。

 

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2.危機の火種
海外におけるリストラクチャリング計画を検討している場合や、不正行為の調査を予定している場合においては、これから遂行しようとしている計画の水面下に 「危機の火種」 が存在していないかどうか予めリスク精査を行なって確認することが極めて重要となります。

コントロール・リスクスがこれまで対応してきたリストラクチャリングや不正行為調査に起因する危機事象を眺めると、この危機の火種に関するいくつかの特徴的なパターンが存在しています。

(1)政治的な圧力等を受けるパターン

  • 例えば、内部通報された事案に、明示的か否かに関わらず、外部の政治家等が関与していることがある

  1. 例として、政治家(又はその配偶者等)が所有するサプライヤーとの間に不自然な契約が存在している場合等である。
  2. 特に、腐敗した政治家が関与している場合、通報された事案への調査が行われることへの嫌気又は報復として、外部から政治的な影響力を行使し、ライセンスの剥奪を示唆するといった政治的な嫌がらせ(ハラスメント)が行われたり、地域住民を扇動して工場周辺で騒ぎを起こさせたり、事実無根の噂を行政機関に吹聴して事業環境への影響を危惧させ、是正措置を妨害したりすることもある。 

  • これらが更に激化すると、以下のセキュリティ事案も発生することがある。
  • なお、一部の国・地域においては商業賄賂等による治安当局による駐在員の拘束リスクもある。


(2)セキュリティ事案に発展するパターン

  •  政治家等の関与:政治家等による嫌がらせ行為が激化し、現地の犯罪組織等をけしかけて、脅迫行為に及んだり、物理的な資産破壊を行う。

  •  犯罪組織の関与:例として、犯罪組織の息のかかった企業との取引を行ってしまっていた場合、それを解消しようとした際に、犯罪組織が抵抗して脅迫してきたり、セキュリティ事案を発生させてしまったりすることが考えられる。また、不正行為を調査する中で、当該企業に対する実態調査のためのインタビューを行うなどの際に、暴力行為を受けて威嚇される事案も実際に発生している。

  •  個人的動機による犯行:根拠に乏しい中で不正行為を疑われて調査対象となった人物が、人権侵害等の理由から、調査を主導した人物や通報者に対する襲撃を企てる可能性が否定されない。この場合の手段は、直接・間接は問わず、外部組織の協力を得ることも含まれる。また、これらの対象に、駐在員に帯同する家族も含まれてしまう可能性があり注意が必要である。

  •  風評被害に起因:会社の不正行為への関与、又は不誠実な対応についてソーシャル・メディア等に情報が流れ、それに過剰に反応した特定のグループ等が、会社に対する脅迫を行ったり、直接的な危害を加えようと画策したりする可能性は否定されない。

 

(3)風評リスクが発生するパターン

  • 会社に対する個人的な恨みなどから、脅迫などの手段は取らなかったものの、会社に対する不満や実態をソーシャル・メディアにおいて暴露することも考えられる。会社の信用が毀損されるだけではなく、事業への影響も深刻となり、前述のセキュリティ事案が発生してしまう可能性も否定されない。
  •  なお、政治家や犯罪組織が、嫌がらせのためにデマを流すことも実際に事例として存在している。
  •  特定のグループの尊厳(人格的のみならず、宗教的、民族的等の観点も含める)に抵触するようなコンプライアンス違反の場合、深刻な風評被害及び事業への深刻な影響も想定される。

3.リスク管理、危機管理上の推奨アプローチ
止む無くリストラクチャリングを進める必要性がある場合や、大規模な不正行為調査等を進めようとする場合、次のような点を念頭に置き、潜在的な脅威の発生を抑止し、危機発生を防ぐことが肝要となります。


リスク管理、危機管理上の推奨アプローチ

 

ステップ1:社内外の主要な利害関係者の洗い出し
先ず、社内外の主要な利害関係者(本ページ冒頭の図を参照)について洗い出します。これが不正行為調査の場合は、当該不正行為に関与している可能性のある人物については念のため利害関係者に全て含めます。

不正行為調査の場合、「フォレンジック調査」 を通じて、社内外の利害関係者を特定します。

ステップ2:当該利害関係者が有すると見られる人的繋がりの洗い出し
政治家、治安当局、外部労働組合、地元有力者、地元メディア、犯罪組織、等、当該利害関係者が有しており、また必要な際に活用可能と想定される外部との人的繋がりについて可能な範囲で洗い出します。なお、この際の洗い出しにおいては、外部専門機関との連携により、自社単独では把握しきれない、噂ベースの繋がりの有無に関する裏取り調査や、非公知の実態を確認するための実地調査を行なうことが推奨されます。
不正行為調査の場合、こちらもフォレンジック調査を通じて洗い出すことができる場合があります。

ステップ3:リストラクチャリング計画を進めた場合に想定される利害関係者が被る影響の評価
仮にリストラクチャリング(又は不正行為等に伴う解雇・整理)を進めるとした場合に、社内外の利害関係者が被ると想定される各種影響について評価します。

ステップ4:利害関係者に起因して生じる可能性があるリスクの洗い出し、及びリスク評価
ステップ3において、被る影響の度合いが高いと評価された利害関係者が、実際にリストラクチャリング計画(又は不正行為等に伴う解雇・整理)の実施を耳にした場合に取ると予想される反応、そして当該計画や調査を形骸化(防止)するために取ると考えられる行動に起因するリスクを洗い出し、その影響度合いがどの程度に及ぶか評価します。

ステップ5:リスク・シナリオの精査
想定される様々なリスクをステップ4において洗い出し、それらが実際に発生した場合、最終的に自社がどのような状況に置かれ得るかをリスク・シナリオの策定を通じて綿密にシミュレーションを行います。これにより、リストラクチャリング計画や解雇・整理を止むを得ず進める場合における、リスク管理計画や危機対応計画を適切に策定することが可能となります。
特に、新興国においては、不測の事態が往々にして起きることがありますが、これも事前に現地における慣習を踏まえてリスクとして想定しておくことで回避できる場合があります。
想定される危機に対する備えを重層的に行っておくことにより、自社の従業員やその関係者の身体的な安全を確保することにもつながります。

ステップ6:リスク管理計画、危機対応計画の策定
情報統制計画、コミュニケーション戦略(対社内外の利害関係者)、安全管理計画(リスク軽減策の策定と導入)、危機対応計画等について策定し、計画に基づきつつも実際の状況に臨機応変に合わせるようにして計画を進めます。また、必要性が高い場合、特にセキュリティ関連のリスクの発生が否定されない場合、事前に必要な危機対応訓練を行なうことも推奨されます。

コントロール・リスクスの位置づけと使命
リストラクチャリング計画においても不正行為調査においても、慎重を期して計画を進める上で、様々な専門機関を起用して協働することが多いと理解しております。コントロール・リスクスは、複雑なプロジェクトの管理・対応経験を豊富に有しておりますので、リスク管理、危機管理の観点から、プロジェクト初期段階から関与し、全体の計画における見落としを防ぎ、不測の危機が発生しないように最善の対応をさせていただきます。しかしながら、いざという場合に備えて、危機が実際に発生した際の初動対応についても万全に準備をいたします。
以下は、弊社がこれまで長年にわたり現場において培ってきた実践対応の中で、実際にクライアントからの要請が多かったサービスの項目となります。セキュリティの強化に向けた各種施策も併せてご対応可能です。

 1.計画策定  2. 計画実施  3. 危機対応
情報収集・調査分析、脅威分析及び利害関係者の洗い出し
主要ターゲットが有する社内外関係者との繋がりを精査、影響力を含めた脅威度合の分析
(フォレンジック調査や実地における聞き取り調査等を含む)
人的及び物理的資産の保護

リストラクチャリング対象への通知、退職勧告や解雇通知の前後、又はそれを巡る交渉中における、経営幹部、従業員及び物理的資産の保護に向けた対応
敵対的な環境下における交渉支援

従業員の解雇等を巡り、敵対的な環境下での交渉を迫られた際における、交渉アプローチに関する助言
施設のセキュリティ・レビュー

施設のセキュリティ管理態勢のレビュー、物理的資産に対する既存のセキュリティ管理リソースの有効性、及び脆弱性をチェック
交渉支援

事態の悪化を回避するための交渉アプローチに関する助言
経営幹部等の安全確保

経営幹部等、及び家族の保護
必要に応じて安全な場所への退避を実施
リスク・シナリオ策定(ワークショップ形式)
複数のリスク・シナリオを定義。各リスク・シナリオに付随する潜在的リスクを踏まえ、その軽減に向けた施策を整理
メディア・モニタリング支援

メディアのモニタリングを通じた風評リスクの軽減に向けた対応支援
危機発生時におけるコミュニケーション
事業中断又は風評被害が発生した際、従業員、取引先、政府機関、又は報道機関向けのコミュニケーション計画策定を含めた対応支援
セキュリティ管理及び緊急時対応計画の策定
セキュリティ面のリスクの顕在化に備えた態勢整備、及び有事が発生した場合の初動対応の計画策定
  危機の収束に向けた施策の策定及び導入支援
オペレーションの正常化に向けた施策導入を支援

     

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コントロール・リスクス日本法人
代表電話番号:03-6866-0866