日本で活発化するアクティビスト(物言う株主)

日本で活発化するアクティビスト(物言う株主)


Author: Michael van Zyl 

背景

日本企業は近年、気候変動関連の株主提案の対象として過去最多の件数を記録しています。アクティビストに関する情報を提供しているInsightiaによると、2020~2022年にアクティビスト(物言う株主)のターゲットとなった日本企業は65社で、その数は世界でもトップクラスでした。株式会社Proxy Watcherによると、22年度の決算期には、9社に対して63件の株主提案が提出されました。その内訳は、ガバナンス関連32件、社会関連18件、環境関連13件です。2023年度の決算期には、この傾向がさらに拡大すると予想されます。
また、ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイをはじめ、海外のプライベートエクイティ・ファンドやヘッジファンドが日本に進出する動きも見られます。日本企業に対する世界的な関心が高まると同時に、監視の目が厳しくなっていくでしょう。

 

 

なぜ日本企業がアクティビスト(物言う株主)のターゲットに?

日本企業は、ESGやサステナビリティ(特に地球温暖化対策や二酸化炭素排出量削減)の観点で、世界に比べ遅れをとっていると広く認識されています。そのため、昨今、海外の機関投資家からESG改革を推進するよう促されることが増えています。機関投資家も、投資を通じたESG改革推進をステークホルダーから求められているからです。また、アクティビスト関連NGOやアクティビスト投資家も参入しており、日本におけるアクティビストの活動が活発化しています。規制当局は新しいルールを積極的に発表しており、その機運を高めています。

昨今のアクティビズムを牽引するのは誰か?

下記のように多様な個人・組織がアクティビズムを牽引しています。企業が直接管理できない場合も多く、リスクを増大させないためには適切な対応が必要です。

  • アクティビスト投資ファンド(ESG投資ファンドや責任投資ファンドを含む)
  • アクティビストNGO(環境NGOや人権NGOなど。企業に直接働きかけたり、投資家に間接的に働きかけて影響を与える)
  • 地球温暖化や持続可能性に高い関心を持つ市民
  • メディア
  • 社員(企業に不信が募れば、アクティビストや内部告発者になる可能性が十分に考えられる)

アクティビストの戦略とは?

アクティビストのはさまざまな戦略を採用していますが、代表的なものは下記です。

  • 企業の株式を購入し、買収や取締役会の議席を獲得することで変革を迫る
  • 重要案件や役員人事に関する株主投票に参加する
  • ESGや人権問題に関して、企業を否定的に捉えるようなレポートを発行する
  • 反体制派の取締役を指名し、会社の変革を求める

ESGや人権に対する社会的意識や規制圧力が増す中、アクティビストは、比較的リベラルな活動を支持することが多く、企業が進化・進歩を止めていると見なされないようにするのは容易ではありません。科学的な研究(注1)においても、コーポレートガバナンスと多様性が株主価値を高めることが明らかになっており、アクティビストの行動は正当化される傾向にあります。

どのような影響を及ぼすか?

アクティビストの活動は、対象企業に対し、少なくとも短期的な影響を及ぼします。例えば、株価、取締役会レベルの戦略/意思決定、会社の方針/業務オペレーションなどに直接的な影響を及ぼします。このような影響により経営が不安定化するのを防ぎ、現状を維持するために、企業はアクティビストの提案に対抗し、多くの大企業がこの戦いに打ち勝ってきました。

アクティビストは、対象企業の買収や役員交代などの目的を果たせなかったとしても、少なからず企業に変化をもたらします。アクティビストは、高度な変革ではなく最終損益などへの影響を狙っているのかもしれません。そのため、企業が短期的な戦いに勝ったとしても、長期的な変革を迫られる可能性があります。

日本企業を取り巻く環境の複雑化

日本ではアクティビストが増えてきているものの、まだ序盤です。アクティビズムの高まりが、日本企業や日本経済、その他のステークホルダーにとって良い事なのかは断言できません。従来、日本企業は不正や法令違反が他国と比べて少なく、さらされているリスクは限定的だとみられていました。しかし、企業を取り巻く市場環境の複雑化に伴って、日本企業は以下のようなリスク要因に直面していることを認識し、自社のコンプライアンスやESGの取り組みを見直すなど適切な対応が求められています。

  • 日本におけるESGや人権関連の規制の強化に伴い、アクティビズムが定着しつつある
  • 国内のアクティビストか/海外のアクティビストか、NGOか/投資家か、グローバル規制に対する動きか/日本の規制に対する動きか、などアクティビストの特性が多様化。そのため、企業がこの流れを完全に食い止めることは不可能に近い
  • ESGに反対するロビー活動や否定的な態度をとる企業は、世間や投資家、メディアから反発を受け、レピュテーションリスクにさらされる
  • 日本企業のESGに対する認識と他国の認識や規制とのギャップは、アクティビズムの高まりに寄与している。この認識に対処できなければ、アクティビズムは激化する
  • アクティビズムの高まりは日本企業に対する悪評につながるため、一部の日本企業は直接的/間接的にレピュテーションリスクに直面する。最悪の場合、潜在的なビジネスパートナーや融資担当者が、取引を考え直すケースもある
  • 次世代の従業員はサステナビリティについてより積極的に発言し、十分な取り組みをしていない企業で働くことを望まず、人材の維持・確保の観点でもESGの重要性が増している

コントロール・リスクスの提供価値

アクティビストの動きが活発する中、日本企業はアクティビストやステークホルダーとオープンな対話を通じて良好な関係を構築しつつ、アクティビストからの悪質な指摘には慎重に対応することが求められます。また、自社のESG/コンプライアンスに対する方針を表面的ではなく実行で示していくことが重要です。

コントロール・リスクスは、ESGやサステナビリティの専門家で構成されるグローバルチームを擁し、ESGリスク管理に関するアドバイス、リスク・スクリーニング、危機解決に向けた情報提供など幅広い支援を提供しています。日本企業が、ESGに関する現状・課題を特定し、具体的な実行計画を策定し、レピュテーションリスクを先回りして管理するための支援を行います。より詳細や具体的なご相談などございましたら、下記フォームよりお気軽にお問合せください。

(参考)注1:Niikura, H., Seko, M. The effect of inside and outside female directors on firm performance: comparison of the First section, Second section, Mothers, and Jasdaq in the Tokyo Stock Exchange Market. IJEPS 14, 123–166 (2020).

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