2047年に向けてインドが描くビジョン​

2047年に向けてインドが描くビジョン


Author:Amit Narayan 

2024年は、今後数十年のインドに対する経済的な期待が高まり、国際社会におけるインドのプレゼンスが向上し、インドにおけるビジネスがより予測しやすくなるなどの変化が一気に加速する年になるでしょう。2024年に正式に発表される予定の「The Vision 2047 (2047年に向けたビジョン)」は、インド独立100周年にあたる2047年までに、インドの国内総生産を3.4兆USドルから、30兆USドルまで引き上げる道筋を示すものです。 

インド政府は、この成長が持続可能であり、全国民が恩恵を受けるものでなければならないとの共通認識を持っています。2047年にはインドの人口は15億人に達する見込みで、先進国への変貌を目指しています。 

政府の投資プログラムに協力し、インドの投資や雇用を増やす企業は、成長に伴うリスクや課題への対応策を練る必要があります。「リスクマップ2024」で挙げたトップ5のリスクに基づき、今後のインド経済の展望を解説します。  

世界の再編成:グローバルに行動し、ローカルで生き残る 

リスクマップでは、2024年の世界経済を形作る2つのメガトレンドとして「地政学的な競争」と「ローカリゼーション」を取り上げました。インドほど、このトレンドが当てはまる国はありません。 

インドは、中国に対する貿易と投資の制限をいち早く採用してきました。インドは2023年2月に200以上の主要な中国製アプリの使用を禁止しましたが、このような規模の措置は他の国では見られません。また、インドの生産連動型インセンティブ(PLI)制度などは、輸入を減らすことで地政学的なインドの地位向上を目的としていると考えられます。 

インドは、主に規制を駆使して経済を強化しようとしています。これはインドが他国や地域貿易圏と交渉中の自由貿易協定にも見られる顕著な特徴です。この経済強化の取り組みは、友好的な貿易に加えて、インドの持つ技術・市場・資源といったアセットへのアクセスを戦略的に制限または提供するなど、様々な手法を通じて展開されています。 

インド市場で生き残るために、企業はさまざまな点で、このようなインドの行動特性や意思決定の原理をよく理解し、それらと整合した戦略を立てる必要があるでしょう。例えば、インドで事業を行う製造企業は、インドの消費者行動だけでなく、現地の政治、社会規範、国民感情といった点にも配慮が必要です。 

揺らぐ米国政治と中国経済 

リスクマップでは、2024年の最も重大な経済リスクとしての中国経済の停滞と、大統領選の駆け引きにより外交政策と国内情勢が不安定化することが予想される米国政治を取り上げました。 

米中が自国内のやっかいな経済問題や国内政治に四苦八苦している間隙をついて、インドは世界の地政学的なプレゼンスを高め、大規模なインフラ投資の促進を通じて経済成長を加速させるでしょう。インドは2024年から2047年までの数十年にわたり、年率6%以上のGDP成長率を見込んでいます。 

2024年に行われる選挙では、モディ氏が3期目に就任する可能性が高いでしょう。モディ氏は、より大きな改革とインセンティブの創出、データ、エネルギー転換、中央政府と州政府とのパワーバランス、重要な国家インフラ管理に関する規制強化を進めるでしょう。また、G20議長国としての地政学的なポジショニング確立を目指していることは明白であり、アフリカへの働きかけ、グローバル・サウスへの資金と技術移転、人口ニーズと開発目標に基づく世界秩序の見直しを推進するでしょう。 

気候変動:世界的な脅威の増幅ファクター 

インドでは、農家の60%以上、農作物が栽培されている土地の総面積の55%が雨に依存しています。これらの農家・農作地では、インドの主要農作物の大半(約40種類のうち34種類)を栽培しており、天候に大きく左右されます。インドにとっても、気候変動は重大な脅威の増幅ファクターです。 

現政権は、この気候変動に対応するための何らかの政策(行動の変容をもたらすためのインセンティブや規制改革など)の必要性を認識しています。現在、インドのエネルギー転換に必要なインフラと技術変革の負担の多くは、国外からの投資や民間企業に依存しています。そのため、政府は投資と成長促進に向けて、魅力的な国としてインドの地位を向上・維持するために、持続性ある一貫した取り組みの必要性を認識していることでしょう。 

インドは、石炭への依存が続いているにもかかわらず、再生可能エネルギー(風力、太陽光、原子力、水力)への移行も急速に進めています。また、グリーン水素やブルー水素への投資も早くから行っています。インドは2070年までにネット・ゼロを達成することを約束し、さまざまな政策イニシアティブ、税制優遇措置、国際的な技術移転を通じてグリーン投資を実施しています。これらはすべて、インドが責任ある成長の必要性を認識していることを示唆しています。また、インド政府は、電子機器、最先端技術、電気自動車の製造に不可欠な重要鉱物(クリティカルミネラル)や希少鉱物の供給を確保するための取り組みを拡大しています。 

信頼の崩壊:完全性のほつれ 

インドのITコンサルティング企業各社は、老朽化したエンタープライズ型のITプラットフォームにDXプログラムを提供することで成長してきました。しかし、昨今は需要が減少しつつあり、それに加えて、データとテクノロジーの完全性確保に関する課題に直面しています。また、AIはインドに独自の脅威をもたらしています。デジタル個人情報保護法は悪意のあるAIがもたらす脅威に対処しておらず、選挙戦が進む中、フェイクニュースやディープフェイクコンテンツが増加するでしょう。 

インド政府はもっとインドのテクノロジーやデジタルインフラを慎重に管理し、規制する必要があります。インドには、「インディア・スタック(India Stack)」という政府公認のオープンAPIがあります。インディア・スタックとその上に実装されるアプリケーションは、いまや国家の重要な資産です。このAPIにより、サードパーティ(民間、公共、非政府、社会的企業)が政府のID、決済ネットワーク、データにアクセスできるアプリを構築し、市民や消費者に特定のサービスを提供できるようになっています。 

例えば、アドハーシステム(インド版マイナンバーカード)、統合決済インターフェース(UPI)決済、5G対応スマートフォンアクセスシステムなどを通じて、納税や農業ローンから消費者へのサービス提供まで、あらゆるものがオンラインで提供されています。これらのデータシステムの完全性とレジリエンスを確保することは、今後のインドにおける事業継続と国家主権の鍵となるでしょう。 

過重なリスク管理:危機の蔓延 

リスクマップでは、2024年は破壊をもたらす要因と破壊の間の負のループが激化し、企業・組織のリスク管理能力とレジリエンスが厳しく試される年になると述べました。インドも例外ではなく、この負のループに苦しむことになるでしょう。経済的圧力は気候変動を促進し、紛争はサイバー攻撃などデジタルの脅威を拡大させ、規制強化は汚職を助長しています。 

しかし、インドには、政治的な安定性や地政学的なバランス感覚や地位の向上など投資家の期待や信頼を高める要素も多くあります。また、「インディア・スタック」が高い信頼性と拡張性を持っているため、インド政府は国内のデジタル経済活動から生まれる大量のデータを効果的に管理することにいまのところ成功しています。 

過重なリスク管理には、テクノロジーとデータを活用してインテリジェンスを駆使し、脅威を監視・管理・軽減するための、包括的なアプローチが必要です。インドは、多面的で相互依存的なリスクプロファイルを持つ市場ですが、この市場で、テクノロジー主導の複合的なアプローチをうまく統合し成長機会をつかむことができる企業は、世界の他の地域・国でも成功することができるでしょう。 

 

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